2020.06.20 ( Sat )
2020年6月議会の本会議質疑報告です。工事中の安威川ダム湖周辺で、20ヵ所余の斜面崩壊が発生。軟弱地盤、高地下水位地での無謀な観光施設の建設計画は中止せよ。
2年後(2023年3月)に完成予定とされる安威川ダム。ところが本年5月末に大阪府は2017年21号台風(最高時間雨量11㎜)と2018年西日本豪雨(最高時間雨量33㎜)により、ダムの堤体上部斜面とダム湖周辺斜面が崩壊し、「修復工事に65億円かける必要性が生じた」と発表しました。(当初ダム建設費予定総額約836億円が約1676億円に)この地域の地質の脆弱性を指摘してきた地質専門家は「この程度の雨で地下水が上昇し、崩れるようでは今後とも、何度も補修工事が必要」としています。こうした中でも茨木市長は[安威川ダム湖周辺整備4事業(温泉宿泊施設併設「道の駅」など)」の推進を表明しています。6月市議会では、事業用地を取得するとして4・5億円(取得予定総額約7・6億円)を計上しました。さらに関連施設整備費を含めると「総額約22億円支出する」としています。こうした「安全無視」の、無謀な事業を推進する茨木市長の態度を指摘すると共に、事業の中止を強く求めました。
大きな一つ目 安威川ダム周辺整備事業について
第一に、事業計画の内容について
第二に、用地取得箇所について
第三に、展望広場用地の超軟弱地質について
大きな二つ目に、ダム建設費用の増額約140億円について
・平成29年台風21号と西日本豪雨による被害(非常用洪水吐き法面とダム湖周辺の斜面地が被害)への対策工事に対する増額について・当日の直近の観測点における時間雨量の状況について
大きな一つ目に、安威川ダム周辺整備事業についておたずねします。
第一に、事業計画の内容について、おたずねします。
まず茨木市が市立として整備する事業名を明らかにするよう求めます。また事業の中で、茨木市がその用地を取得する計画の事業名を合わせて明らかにするよう求めます。さらにそれぞれの事業の用地取得予定額とそれ以外の経費予定額の概算をお示し下さい。
水源地域整備計画として、本市が実施する事業については「ダム湖畔展望広場整備事業」、「権内せせらぎ公園整備事業」、「ダムサイト周辺遊歩道整備事業」、「阿武山つつじの森整備事業」の4事業です。このうち、「ダム湖畔展望広場」と「権内せせらぎ公園」の2事業が用地取得を伴う事業となります。
各事業の用地取得予定額とその他経費予定額です。ダム湖畔展望広場整備事業につきましては、過年度取得分を含む用地取得予定額として7億5千5百万円を、それ以外の経費予定額として、10億円を予定しています。権内せせらぎ公園整備事業につきましては、用地取得予定額として、7百万円を、それ以外の経費予定額として、2億9千万円を予定しています。ダムサイト周辺遊歩道整備事業につきましては、用地取得以外の経費予定額として8千万円を予定しています。阿武山つつじの森整備事業につきましては、用地取得以外の経費予定額として6千2百万円を予定しています。
事業名 |
用地取得予定額 |
以外の経費予定額 |
合計 (単位:円) |
ダム湖畔展望広場整備事業 |
755,000,000 |
1,000,000,000 |
1,755,000,000 |
権内せせらぎ公園整備事業 |
7,000,000 |
290,000,000 |
297,000,000 |
ダムサイト周辺遊歩道整備事業 |
0 |
80,000,000 |
80,000,000 |
阿武山つつじの森整備事業 |
0 |
62,000,000 |
62,000,000 |
合 計 |
762,000,000 |
1,432,000,000 |
2,194,000,000 |
第一に「事業計画」の内容について重ねておたずねします。先ほどの答弁で、安威川ダム周辺整備事業費の市直接施行分4事業の合計は約22億円とありました。それ以外の市が支出する事業の計画を明確にするよう求めます。また施設完成後における施設維持のための経常経費市負担分の見込みをお示し下さい。
安威川ダム周辺整備事業において、4事業以外で市が支出する予定の事業はございません。
施設については、事業候補者からの提案を受け、協議し決定するものであり、現時点においては経常経費市負担分の見込みをお示しすることはできません。
第二に、用地取得箇所についておたずねします。昨年の12月議会で議決された1箇所(面積23,238㎡)と本年6月市議会で提案されている4箇所(合計面積81,269㎡)と合計5箇所(合計総面積104,507㎡)と聞いています。
それぞれの取得予定価格の㎡あたり金額と総金額を明らかにするよう求めます。またこの5箇所で取得予定箇所は「全て」と聞いていますが、間違いないかおたずねします。さらに取得予定先の中で、大阪府が安威川ダム事業の建設残土の埋め立て用地等として利・活用した土地を明示するよう求めます。
(答弁)岸田都市整備部長
つぎに用地取得箇所についてです。昨年12月議会で議決頂きました、取得済みの1カ所については、取得金額を総面積で割った1㎡あたりの平均単価が13,486円/㎡、金額としては3億1千3百万円です。この6月議会に上程している取得予定地については、取得予定金額を総面積で割った1㎡あたりの平均単価が5,456円/㎡、金額として4億4千3百万円です。土地の状況によって前年の単価差が生じております。現在の取得予定箇所は、5箇所でありますが、今後、事業候補者との協議によって、変更の可能性があります。
また、大阪府の安威川ダム事業により発生土の埋立を実施された土地は、生保地区のあさご谷のみです。
(2問目質問)畑中議員
第二に、事業用地取得について重ねておたずねします。事業のための取得予定面積は現状でも、10万㎡を超え、総取得予定金額は約7.6億円との答弁がありました。とくに、あさご谷の建設残土の埋め立て地の事ですが、当該土地は大阪府の埋め立て事業実施時に、将来周辺事業実施時に茨木市が取得する約束があったのかおたずねします。そもそもは大阪府が埋め立てのために利・活用した土地です。用地取得費用の相当分は大阪府が負担すべきと考えます。見解を求めます。
あさご谷を茨木市が取得することへの大阪府との約束についてはございません。
あさご谷の用地取得費相当分を大阪府が負担すべきとの考えについてです。当該土地については、市として「ダム周辺整備事業」を実施するうえで必要な土地であることから取得するものであり、大阪府が用地取得費用を負担するものではないと考えます。
(1問目質問)畑中議員
第三に、展望広場用地として、前回取得地と今回提案の取得予定地の中に、大阪府が安威川ダム事業の建設残土の埋め立て用地等として利・活用した土地(生保地区あさご谷面積57,451㎡)があり、過年度の大阪府調査では2015~2016年に40メートルを超える髙盛り土工事が行われ、しかも建設残土埋め立て土質はD級やCLI級超軟弱土質です。その他の建設残土の埋め立て地も同様の土地の性質を持っていると思われます。市として、その内容を把握しているのかおたずねします。
(答弁)岸田都市整備部長
土質条件については、聞いておりませんが、本市で取得を予定している土地で、大阪府が盛土によって造成した箇所については、砂防指定地でもあるため、「砂防指定地内行為許可技術審査基準」に則った施工を実施されていると聞いております。
(2問目質問)畑中議員
第三に、用地取得予定地の地形と地質についてかさねておたずねします。問題は現状の土地の状況です。人工改変地、自然斜面地などの内訳をお示し下さい。1984年に大阪府が実施した「ダム周辺斜面地地質調査」(その1、その2)「ダム湖右岸部沢部盛土部斜面地地質調査」(その1、その2)では「ダム湖貯水池内沢部に計画されており、その湛水池法面を検討するため盛土計画地内でボーリング調査、土質調査を実施した」「当盛り土計画の盛土高は40メートルとなるとともに、湛水池内に位置し、常に貯水池の水位の影響を受けるので、普通の盛り土よりも不安定となる」との記述があります。この報告書により元の地形や地質をうかがい知ることが出来ます。もとの地形や地質状況をお示し下さい。さらに問題のあさご谷埋め立て地ですが、「『砂防指定地内行為技術審査基準』に則した工事が行われているので安全」としていますが、今回の府の追加実施工事の多くが軽微な自然災害で、再工事を実施しなければならない状況からして、埋め立て地の詳細な調査が必要です。見解を求めます。
用地取得予定地のうち、あさご谷については、人口改変地が約3万6千㎡、自然斜面地が約2万1千㎡です。
元の地形や地質状況についてです。あさご谷に関する地形については谷地形、地質についてはホルンフェルスや花崗岩類が分布していると大阪府から聞いております。
あさご谷については、盛土に際し原地盤の調査を実施した上で、砂防指定地内行為技術審査基準等に基づいて適切に施工しており、安定した盛土であると大阪府から聞いております。
(1問目質問)畑中議員
大きな二つ目に、茨木市の用地取得と関連して、大阪府が今回大阪府館整備審議会に諮問し、パブコメを通じて、9月府議会に提案予定のダム建設費用の増額約140億円について、おたずねします。
その内容は台風21号(2017年)と西日本豪雨(2018年)により、非常用洪水吐き法面とダム湖周辺の斜面地が被害を受け、その復旧と対策工事に65億円を増額するというものです。その内容は「ダム湖周辺では20箇所を超える地点で、亀裂や斜面崩壊が生じた」としています。問題はこの二つの豪雨災害ですが、当日の直近の観測点における時間雨量の状況をお示し下さい。また豪雨の状況についての市の判断をお示し下さい。また大阪府からこの被害の原因について、事前の対策工事の不備又は地形や地質の問題点などどのような説明を受けているのかおたずねします。
(答弁)岸田都市整備部長
つぎに台風21号と西日本豪雨での当日直近の観測点での雨量についてです。
大阪府が設置している、大門寺観測局において、台風21号では97㎜、西日本豪雨では413㎜が累積雨量として観測されています。また車作観測局において、台風21号では157㎜、西日本豪雨では475㎜が累積雨量として観測されています。
豪雨の状況における市の判断についてです。台風21号では大阪府から、土砂災害警戒準備情報が、西日本豪雨では気象庁および大阪府から、土砂災害警戒情報がそれぞれ発表されており、市として避難所の開設や警戒体制などの対応を行っております。被害の原因についてですが、非常用洪水吐き法面およびダム湖周辺の斜面地については、台風21号や西日本豪雨等による強い雨等によって生じたものと、大阪府から聞いております。
(2問目質問)畑中議員
大きな二つ目の両自然災害の内容について重ねておたずねします。
まず21号台風と西日本豪雨の大門寺・車作両観測点の最高時間雨量をお示し下さい。「被害が発生しうる規模の雨」との答弁ですが、年確率降雨量の推定もお示し下さい。
今回の大阪府の安威川ダム建設費の増額140億円の内、自然災害により増額となったのは非常用洪水吐きの法面対策の増で22億円、ダム貯水池周辺の斜面保全対策の増で43億円、合計65億円としています。またその現状としての大阪府の認識は「非常用洪水吐きの構造物施工に先立ち、基礎掘削および法面工を進めていたところ、台風21号の豪雨後、施行後の法面工に複数のクラックが発生、また底盤部や法面頂部に亀裂等の変状を確認した」としています。こうした事案について専門家は「この程度の雨で地下水が上昇し、崩れるようでは、今後とも、何度も再工事が必要であることを示している」としています。茨木市の見解を求めます。
またダム湖貯水池周辺の斜面崩壊については、大阪府は「調査により判明した20箇所については、いずれもダム貯水池、付け替え道路等に隣接する斜面である。今後、ダム堤体完成後の試験湛水や経年的な降雨等により表層風化の進行により不安定になる急斜面においてダム貯水池内への崩落や近接道路への影響を来す表層崩落を防止するため」としています。おなじく専門家は「のり面の安定性が悪いので崩れている。ここにも風化の顕著な層があり崩れやすい。また基礎地盤の浸透性が問題となり、そこは各種断層があり、破砕され、一部D層やCLI層も存在し、浸透に問題があり、セメントで広範囲に補強の必要性がある」としています。とくに展望広場が計画されている箇所についての専門家の指摘は、「特に右岸は、斜面の安定性が悪く、断層も斜面に平行にあり、破砕が顕著で、一部丹波帯- 超丹波帯の地層が流れ盤で、崩れやすく崩れている」としています。
以上のように、ダム湖周辺で斜面崩壊の危険性が一番高い右岸半島部。この地点で斜面崩壊がおこった場合の復旧工事の責任は大阪府にあるのか、茨木市にあるのかおたずねします。また将来事業参加する民間事業者への賠償責任の所在についてもおたずねします。
(答弁)岸田都市整備部長
台風21号と西日本豪雨における大門寺・車作両観測点の最高時間雨量についてです。台風21号では、大門寺観測局で6㎜、車作観測局で11㎜です。西日本豪雨では、大門寺・車作観測局とも33㎜です。
台風21号及び西日本豪雨の年確率降雨量(年超過確率)については推定しておりませんが、1/100確率の安威川ダムの計画日雨量247㎜に対し、台風21号では、車作観測局で126㎜、大門寺観測局で50㎜、西日本豪雨では車作観測局で275㎜、大門寺観測局で229㎜となっております。
非常用洪水吐き法面は、安威川ダムの本体工事の中でも、連続した切土高や切土勾配が最大級であることから、地盤の変位と地下水位を観測しながら掘削を進められておりましたが、掘削がほぼ終了に近づき、切土高が最も大きくなったときに、台風21号により風雨の影響を受け掘削を終えたばかりの底盤部や、既に施工済の法面頂部に亀裂や変状が生じたものであると聞いております。大阪府におかれては即座に詳細な調査を実施するとともに、地盤工学分野の学識経験者による、現場確認に基づく技術的な助言を得て、対策工法を選定し、工事を進められるなど施工中に生じた事象に対して適切に対応されていると認識しております。
ダム湖周辺で斜面崩壊が起きた際の責任についてです。斜面崩壊が生じた箇所や原因等により復旧工事の責任の所在が異なるものと考えます。民間事業者は、市有地または、河川区域を使用し事業を展開します。民間事業者に対し損害が生じた場合の賠償責任につきましては、損害が生じた箇所や原因等により所在が異なるものと考えます。
(3問目質問)畑中議員
21号台風の最高時間雨量は6mmから11mm、西日本豪雨でもおなじく最高時間雨量33mmとの答弁がありました。三島地域の10年確率の時間雨量は57.5mm(日雨量157mm)とされています。二つの自然災害ではそれを大きく下回る時間雨量でも貯水池周辺では多数の被害が出ました。地質の専門家は「この程度の雨で地下水が上昇し、崩れるようでは、今後とも、何度も補修が必要であることを示している」としています。大阪府も「「調査により判明した20箇所については、いずれもダム貯水池、付け替え道路等に隣接する斜面である。今後、ダム堤体完成後の試験湛水や経年的な降雨等により表層風化の進行により不安定になる急斜面においてダム貯水池内への崩落や近接道路への影響を来す」としています。そこで市長に総括的におたずねします。市長は今議会の「施政方針」で当事業について、「民間活力による施設整備や湖面の利用を図り、魅力的な空間を多くの皆さんにご利用いただくことにより北部地域活性化のハブ拠点としての機能の実現を進めます」と無条件推進を表明しました。党市会議員団はこの事業について2つのリスクを指摘しています。一つは「自然災害のリスク」です。(この地域の地質は軽微な自然災害でも、多くの斜面崩壊などが発生する危険性を持っています。)もう一つはコロナ後の経済情勢の激変リスクで、民間事業者の進出が予定どおり見込まれるのかとのリスクです。現時点でこの2つのリスクについてのさらに「調査」と「検討」が必要と考えます。指摘のこの2つのリスクについての市長の見解をお示し下さい。その他の質問については建設常任委員会で質疑させていただきます。
(答弁) 福岡市長
「自然災害のリスク」および「コロナ後の経済情勢に伴う事業進捗上のリスク」についてですが、これまでも必要な調査・検討は行ってきたところでございまして、今後とも経済面も含めて想定されうるリスクについては、必要な対応等を行っていく考えでございます。
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